映画/HESHER
2010年の映画。
劇場公開を見に行きたくて予定を組んだけど、見れなかった映画。
僕はメタリカがすごい好きなんだけど、メタリカって滅多に映画に楽曲提供をしないバンド(記憶にある限り映画への全面協力はこれが初だったと思う)なんで、とにかく見たくて仕方なかった訳ですよ。
それが最近、国内でDVDが出てるのかどうか知らないけれど、海外版のブルーレイが10ドルで売っていたのを発見して即ポチった。
前情報からして期待感を執拗に煽ってくる内容だったんです。
監督が新進気鋭の若手監督で、サンダンス映画祭で公開されるやいなや、配給権巡って配給会社が奪い合いをしたとかw、プロデューサーがナタリー・ポートマンとかw、ユダヤの出来レースかとwもっと上手に隠そうよwと思ってしまう程に、大量の箔が付けられていて。
それに加えて楽曲提供メタリカで、しかも超ノリ気と来てる。
何か裏があるんじゃあないかと思って調べたら、監督のスペンサー・サッサーが大のメタリカフリークで、それもメタリカの故・クリフバートンが大好きだと来てる。
この映画の主人公も、クリフバートンがモデルだとw
もうね、これは見るしかない訳ですよ。メタリカ好きとしては。
僕はクリフバートンなんか尋常じゃなく好きですし。普段着はもちろんミスフィッツの黒いバンドTに色あせたジージャンにジーパンですよw
それで、まぁ、見たら、うん。
プロットとしては、交通事故で母親を亡くした一家がメタル野郎に出会って、悲しみを乗り越える、っていう物で、ありがちと言えばありがち。
息子は学校で苛められてるダメ人間だし、父親は仕事に手がつかなくなって酒飲んでゴロゴロしてる感じだし。
その家の退廃的な空気が上手に撮れてるんだけど、メタル野郎がこれに輪をかけて退廃的なクズなので、あまり意味が無いというか、プロットとしてはあまり魅力を感じないというか。
劇中の感想を言えば、ずっと味気無いミートローフをダラダラ食わされて、最後に漠然とした感動がやってくる、そんな感じ。
メタリカの曲がかからなかったらしんどかったと思う。
ヘッシャーをもっとミステリアスで神格化された存在に描くべきだったし、破天荒さもそれに応じてもっと高めるべきだったと思う。金城一紀小説に出てくるキャラクターの方がもっと個性的で魅力がある。
主人公の少年が淡い恋心を抱くナタリー・ポートマンをヘッシャーがヤってしまうシーンが出てくるんだけど、寝取られ感はまったくないし、むしろそこにあるのは、「えwやりやがったw」みたいな冷めた半笑い。
監督の伝えたい事がいまいち伝わってこないというか、ナタリーポートマンの、いかにも冴えない、ダメな地方のスーパーマーケット店員の演技がうまかっただけに、違う形でこのシーンを使えばよかったのに、とか、演出や、それを使う為のプロットの粗さが目立つ作品だった。
監督自身の掲げる、克服と喪失の物語を目指すのなら、山場の作り方や魅せ方は違う方法であった方がよかった。
ジョセフ・ゴードン・レヴィットの役作りや、演技はすごくよかった。ロン毛で、刺青だらけで、怠惰な、バンドマン(?)の退廃的な空気感。すごくあるあるだし、何より好きです。
HEであり、SHEである、HESHERという名前を付けるあたり、現代に最適化されたキリストといった役を作りこみたかったんだろうけど、作りこみの不満足さに今一つモヤモヤする展開だった。
俳優陣の演技が良く、映像の撮り方も良かっただけに、シナリオが・・・と悔やまれる。現実っぽさを追求しすぎて、それ故に陳腐になり、せっかくの舞台装置を生かし切れず、映画ではなくなってしまった、そんな映画。