二条城絶叫

john fruscianteと荒木飛呂彦と舞城王太郎と伊藤計劃が好きすぎて二条城にて絶叫。連絡先は2jojojotaroアットマークgmail.com まで。 Last.fmのアカウントはhttp://www.lastfm.jp/user/nijojo

映画/キャサリン・ビグロー/Zero dark thirty

 キャサリン・ビグロー監督作はハートロッカーとK19以来二作目。K19見た時は無意識に男の監督だと思ってたんだけど、実は女の人なんだよね。ハートロッカー以来女性らしさを表に出し始めたのはマーケティングの為なんだろうか。考えてみれば映画って男社会だ。60なのに40後半くらいに見える、良い意味で化け物監督。ジェームズ・キャメロンとの結婚生活もたったの二年しか続かなかったし、なんというか野心的で、心にイチモツが生えまくってそうだ。

 で、編集とか演出とかが上手いのかと言えばそういう訳ではなく、脚本が良い。ハートロッカーもゼロダークサーティも同じ脚本家のマーク・ボール。彼が凄く良い。告発の時っていう映画の脚本も書いてる。この人はもともとジャーナリストだから素材の組み立て方も上手いし、何より求められているものが判って書いてる気がする。

 告発の時はイラク戦争で死んだ若者を巡って家族の心を揺さぶり、対イラク戦争の在り方をアメリカ国民に説いたし、ハートロッカーは戦場賛美とも反戦とも取れる曖昧さで”論争”を引き起こさせるような作りで、離れかけていた戦争への興味を取り戻した。まぁハートロッカーではリアリティが無いとかリスペクトを感じないとか叩かれていたけれど。いずれも戦争に関わった人とその家族の在り方という、普遍的で共感性の高いテーマを組み込んでいるし、プロットの立て方、題材の料理の仕方はすごく上手い。

 で、ゼロ・ダーク・サーティではプロットの視点を家族から働く女性にシフトしてアメリカが行う暗殺への問題提起してる。ちなみにゼロ・ダーク・サーティは公開時期を大統領選前にすることで、オバマ応援のプロパガンダ作品なんじゃないかという話題性を獲得していたはず。やっぱりマーケティングの打たせ方が上手く、これは見習わないといけない。

 

 映画の作りとしては、悪(と言っていいのかわからないし少なくともウサマビンラディンは一方的な悪ではないのだが)を倒す事と、男社会で官僚的なCIAで成果を上げる=倒す事の二つのプロットを走らせ、最後への快感度を上げてる。エンタメ性を上げる手法を表に出すと叩かれそうなので、アクション性を持たせつつも、ドキュメンタリー風の皮を被っている点もポイントがでかい。で、エンタメ作品として快感に酔いながら映画を見てしまうと、”敵を倒した後、その快感を求めてまた新たな敵を作ってしまうのではないか?という疑問”をぶつけられた時、今のアメリカの抱える歪んだ構造に気づかされる、と。

 告発作品としても女性活躍モノとしてもアクションモノとしても楽しめるから裾野は広いし、カップルや夫婦で見た後には戦争ってどう思う?って考えさせる作りだし、ほんまマーク・ボールは脚本巧者やで。