二条城絶叫

john fruscianteと荒木飛呂彦と舞城王太郎と伊藤計劃が好きすぎて二条城にて絶叫。連絡先は2jojojotaroアットマークgmail.com まで。 Last.fmのアカウントはhttp://www.lastfm.jp/user/nijojo

書評/小林泰三/海を見る人

 SF。2時間程度で読了。

 小林泰三はホラー作家というイメージが強かったけれど、とんでもない化け物作家でした・・・

 ハードSF作家ですよ、ハードSF作家。とんでもねぇっつー話。わたしは文系なんでぶっちゃけわからない話もいくつかありましたが、表題作である海を見る人などは非常にレベルの高い物理学の素養に基づいて書かれている本でして。円城塔が真面目に(?)書いたらこうなるなぁ、と。SFでの文体はかなり円城塔に近い、というか円城が意識しているのかもしれない。

 実験的な書き方をしている作品もあって、ホラー畑からでなく、純文学畑から出ていたら小林泰三は文学界とか芥川とか簡単に取れてたよこれ。とにかく異常にレベルが高い。

 通常ハードSFは論理的ではあるんだけれども3ステップ位階段をすっ飛ばしたような論理の飛躍があって、まぁわからなくても楽しめるなー、位の作品であることが多い。作中で未知の論理を扱ったり、矛盾を隠したりするためにそういう事をするんだけれど、小林泰三はそんなことしない。

 真っ向勝負だし、文章中に矛盾が無い・・・らしい。検証サイトを見ているとずらずらと数式が並び、作中世界の構造解説してくれているようなものがいくつもあって、そのどれもがベタ褒めしているのだから、これは驚異的な事ですよ!だいたいどんなSFにも矛盾点があったり、煙に巻きすぎて論理考証がされないものが多いのに。

 

 で、有りがちなSF物と違い、その論理的に構成された美しい世界の中使って恋愛小説を作ってしまうんだからとんでもないですわ。ほんまに。正直飾りだけのクトゥルフ要素とか、底知れぬ気味悪さとか、そういうのを売りにした作家さんだと思ってただけに目からうろこでした。

 とにかくこれは今すぐ二週目に突入するし、明日の昼には近所の大型書店に赴いて速攻で小林泰三のSF小説を大人買いしてしまうレベル。なんだよ、日本人すげぇよ・・・と思った。