書評/イトカツ/銀のニーナ 1-3
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東京で職を失い田舎へ戻ることになった志摩崎修太郎と、美しい銀の髪と蒼い瞳を持つ少女・ニーナ。無職独身27歳の叔父と、銀髪碧眼日本マニア10歳の姪が、高原の街でゆるやかな生活を送る──。日本の夏の様々な風習に目を輝かせるニーナが可愛くて、癒されると同時に励まされる!! と大評判の
よつばと!の二匹目のどじょう漫画。
そう言われても反論は出来まい。中途半端なオッサンとちっさい女の子のゆるい日常ってコンセプトなんだから、よつばと!って言われてもしょうがない。よつばと!ベースに一歩進んだ何かを積み上げた漫画っていったら、子育ての苦労にクロースアップした、宇仁田ゆみのうさぎドロップとか?あれ面白かったなー。
で、この漫画は何を積み上げてるのか?って多分何も積み上げてない。ただ、よつばと!に欠けているもの、例えば連載回数の少なさ、刊行ペースの遅さなどを突いて突いて突いて突きまくっている作品なので、狙いとしては間違いなく成功している。素晴らしいです。
よつばと!が舞台を都市郊外のベットタウンに据えているのに対し、こちらは最初から田舎に設定しているため、よつばと!が描きたくてもなかなか描けなくなっている非日常感でありながらも現実的な日常感をすんなりと描けているのが素晴らしいですね。
10歳の金髪少女が乳首丸出しでお風呂入ってるのはこれ法律的にどうなのよ?とか思うし、海外出版とか色々考えた時におしまいで色々終わってるのはお前のほうだよ、って思わず突っ込みたくなるわけだけど、視点を変えればよつばと!が出来ないことを積極的にこなしているわけで、きっちりと需要を満たせているわけですから。
痒いところに手が届く理想的な二匹目のどじょう漫画って言いたいんだけど、そういうところを極めていっちゃえばそれってオリジナルだしね。この漫画は間違いなくオリジナルの域に達してるよ。凄いよほんと。よく先行作品を研究しているし、自分の長所と組み合わせて上手く行ってる。それが出来る人は本当に世の中に少ない。
主人公の眉毛がぶっといのだってよつばとのヒロインを踏まえてわざとやってるんだろうし。1話で語られる、ようじょと同棲する設定を捕捉補強する会話もよつばと!には無い物だ。この手の漫画でものすごく批判される大人や高齢者の不在も上手く説明できてる。
先入観や批判を受ける事を予測して書いているのが本当に素晴らしい。それって自分の作品の分析と他人の作品の分析が適切に出来ている、ってことだもん。経営者とか編集者には必須の素質ですよ。そしてそれを持つ人は限りなく少ない。
差別化が上手く出来ているし、批判を踏まえた作品作りが出来ているから売り込みや説得も容易になるわけです。肝心の絵がどうだとか、漫画的中身がどうだと言った部分だって、よつばとの劣化という向きはややあるものの、独自性をしっかりと持っている。
この漫画は、日常ものである需要が無いと感じたら、成長させてしまっても構わないってのも強いところ。季節をすっ飛ばして成長させていって思春期特有の悩みを中心に話を作っても面白いし、仮にニーナと主人公がくっつく終わり方を迎えたとしても、うさぎドロップみたいに「気持ち悪い」「有りえない」といった批判は躱せるような構成になっている。
日常側にシフトしていって7~8巻くらいで終わってもいいし、心情描写に重きを置いたストーリーものにシフトしていって13~15巻くらいで終わってもいいし、本当に良く出来てる。とはいえまだよつばとの域を出ていないという意味では薦めにくい。上位互換には無い物が核になったときが本番、ということで、完結が近くなるにつれ評価は100%に近づいていくだろうなぁと。
すごいよこの作者。ものすごい切れ者。