二条城絶叫

john fruscianteと荒木飛呂彦と舞城王太郎と伊藤計劃が好きすぎて二条城にて絶叫。連絡先は2jojojotaroアットマークgmail.com まで。 Last.fmのアカウントはhttp://www.lastfm.jp/user/nijojo

感想/映画/Gravity(ゼロ・グラビティ)2013

 81%

 

 凄い良かった。見る前に色々な想像をしまくってたんだけど、その全てを裏切るとてつもなく実験的な映画だったよ。しかも恐ろしいことにその狙いが全て成功しているっていう稀有な映画。最近の宇宙を舞台にしたSF作品だとMOON(月に囚われた男)くらいしか良かったのがなかったんだけど、ここにきて大きく個人的なランキングが動いたなーというかなんというか。

 大音響&大スクリーンじゃないと面白さが半減する映画なので映画館推奨。他人の気配とか鼻を啜る音とか呼吸音とかそういう雑音が無ければ無いほど良いので、出来れば深夜とか平時朝方の誰もいない映画館推奨。

 

 あと、Wikiのあらすじは全部ネタバレしているので見ない方が良いです。

 

 

 

・良かったところ

 

 見る前はもっとパニック的な感動大作だろうと思ってたんですよ。

 和気藹々としてるリア充ウェーイ!科学への貢献しちゃってる私たちかっこEウェーイ!みたいなたのしいノリが20分ぐらい続いて、事故が起こりシリアスな空気の中パニックと恐怖が蔓延しつつ、どんどんクルーが死んでいってw、挙句の果てにサンドラ・ブロックが宇宙に放り出されてそれて恐怖のあまりおしっこダダ漏らしにしてるシーンが40分位続き、ジョージクルーニ―が助けに行って二人で地球に無事帰還、みたいな。

 邦題がゼログラビティ、なんで、無重力的な恐怖を描いた作品なのかなーって誰でも思うじゃないですか。そうすると、そんな感じの予想になるんですよ。

 で、蓋を開けてみたら全然違うっていうw

 

 原題が”Gravity”って時点でそりゃーそうだろう、もっと早く気付けよって話なんだけど、この邦題の付け方にはやられたというか。無重力の恐怖ってのはあくまでも要素の一部分にすぎず、あくまでも”Gravity”がテーマなんだもんなー。

 地球に還りたいという欲求。地球への愛。地球の重力に縛られた人間だから感じること。

 それらを全部ひっくるめて”Gravity”というタイトルにしているわけで、だからこそあれだけ実験的な映画になったわけで。Gravityをどう描くかに重きを置いて脚本が作りこまれているから、出てくる役者がMOON(月に囚われた男)ばりに少ない、どこの低予算映画だよ!みたいな実験的手法が正解になってくる。音作り、映像の構図、シナリオ、演技。地球への望郷を感じ差させるため、全ての演出が徹底して怖いものになっている。

 だからこれでよかったんだよ!ってぼかしすぎて意味不明な文章になってるけど、ぜひ映画館で見てくださいということで。

 

 

・ダメだったところ

  1.  ネタを知っているとシックスセンスと同じくらい楽しめないがっかり映画になってしまうところ。
  2.  映画館に他人がいるとそれだけで演出効果が急激に下がってしまうところ。
  3.  サンドラ・ブロックの演じるキャラクターに「更年期障害ばりに不安定な精神の持ち主」という要素があって、それ恐怖を煽るための演出っていうのはわかるんだけど、NASAの厳しいメンタルテストで何故落とされなかったのかという疑問が生まれて感情移入を阻害しまうところ。
  4.  そのデメリットが、ジョージクルーニ―の演じるキャラクターの「死ぬほど冷静でナイスガイなベテランクルー」という要素によってうんざりするくらい強調されてしまっているところ。

 

 

 ジョージクルーニーがパニックを感じてる演出と、それをひた隠しにしている演出をもっとブチ込んだ方が良かったと思うんだよねー。そうした方が映画後半の演出も、もっと盛り上がったんじゃないのかなぁと。

 放り出された感を感じさせるための演出効果を狙って、あえてジョージクルーニ―をあんなキャラ設定にしたんだろうってのはわかる。わかるんだけど、ジョージクルーニ―周りをあまりに省略しすぎで、それが現実感の喪失を招いてしまっているんだから、リアリティや人間ドラマを重視するなら逃げちゃいけない部分だったんじゃないのかなぁとも思うんだ。

 そこを切り捨てていった監督の姿勢を評価するかしないかが、この映画を評論するときに注目しないといけない最大のポイントだなぁと思いました。