書評/高橋ツトム/ヒトヒトリフタリ
いつの間にかに完結していた。福島の汚染水を飲むまでの尋常ならざる盛り上がりっぷりとその後の尻すぼみっぷりの落差にビビる。竜頭蛇尾なのは相変わらずですね高橋先生!線の荒れ方やコミックスになっても修正の入らない連載時そのままの手抜き部分。綺麗ごと無しの現実との殴り合いという社会派路線から始まり、途中でやる気なくしてからの綺麗ごと連打による手癖エンド。
打ちきり食らったのか・・・。
風当りの強さ。社会派を許す時代じゃなくなってしまったんだなぁ。娯楽だから社会派に行くんじゃないなんていう人がいるけど、娯楽だからこそ社会派に行く価値があるんですよ。
現実で疲れて娯楽でも嫌な物を見たくないって気持ちはわからないでもないけど、でも、それって逃避でしかないし結局のところ精神的に子供ってことじゃないですか。それが求められる時代っていうのは間違ってるし、少しづつでも変えて行かないといけない。娯楽だけを追求するのは利潤追求には叶っているけれど社会理念としては間違っている。パチンコなんかそうだよね。いや、あれはあれで地方に行けば孤独老人の社交場みたいな側面もあって一概に否定できないんだけれども。
社会派で突き抜けていって欲しかったなぁ。救いようの無いものをもっと積み重ねて、最後の最後で一筋の光が当てられるような終わり方が見たかったよ。鈴木さんももっと作中でどっと老け込んで、え?お前誰?たった一年か半年そこらで人間ここまで変わるの?みたいな状態まで身をやつしながら戦い抜いた方が感動出来た。
久保との対決も浄化して終わったハッピー!でしたけど、社会環境と彼の立ち位置が根本的に変化していないので、あのままだと3、4年もしないうちにまたシュッシュしだしちゃうよ。基本的に、接客業ってお客様のストレスの捌け口になりやすい底辺職な側面を抱えていますから。間違いなく彼にとっては殺した方が(あるいは救えなかった方が)救いがあった。
そういう意味でも全体的にモヤッとしたラストだったので(飲み屋の下りとそこからすぐ死んじゃうって流れはよかったけどそれ以外があまりに突拍子過ぎ)、個人的には首相がフクイチの綺麗な水を飲んだ巻で、作者が急死した事にしておこうと思った。